『バージン』

2003年2月9日
あたしは思うの。
恋って何、愛って何、好きって何って、いつもいつも。

合コン出席率ベストスリーという不名誉な称号をあたしに渡したのは親友だった。
彼女にはつきあって2年目の優しい恋人がいる。
あたしも会ったことはあるけど、穏やかとは言い難いけど、まあ、落ち着いた感じの良い人だった記憶がある。
良いんじゃない? お似合いだと思うよ、って言ったら彼女、本当に嬉しそうに笑うんだもの。
こっちが悔しいとか思う前に、嬉しくなるくらい幸せそうな笑顔。
なんだかなぁ。

そんな彼女は、あたしにも幸せになって欲しいんだって。
だからつき合いで合コンにばかり行っているあたしが心配なそうな。
良い奴だよね。

合コンってね意外と楽しいのよ。
始めて会うような人だけど、知らないお店を教えてくれたり、流行を感じ取ったりとか。
カラオケに行ったり、ご飯を食べたりするだけ。
結構、楽しいのよ。
あたしは別に出会いを求めて出席してる訳じゃないから。
彼氏が欲しいって唸ってる友達とは、ちょっと違うみたいね。

「早く彼氏作れば良いのに」

そうやって親友は唇を尖らせる。彼女から見ると、あたしはなんだか見ていられないらしい。

「別にまだ欲しくもないし。合コンはつき合い」

そっけなく答えて、あたしは手元のレポートに目をやった。
実験の結果は写した。あとは考察を書くだけ。だけど、考察が一番嫌い。白いスペースを埋めるのに、ものすごく苦労する。

「変なの。恋って楽しいじゃん。自分も相手も幸せになれるんだよ」

純粋な瞳で彼女は言ってくる。
ああ、と思った。彼女は本当に恋をしているんだ、と。

「うーん…、なんか煩わしそうだし」

そう答えるとそんなことない、と子供のように頬を膨らませる。
可愛いなぁ、と思いつつ、その頬を突いた。

「ま、今はこのレポートの方が大事なの」

その通り。
あたしは恋なんてしたことない。
愛の方がまだ判る。家族愛、友達に対するこれ以上もない愛情。それなら判る。
でも恋は判らない。

昔、年上の人に憧れたこともあったよ。
彼は、とても楽しい人だった。人付き合いがうまくて、何でもかんでも盛り上げるのが上手い人。
そのくせ、優しいのだ。嫌になるくらい。
その人に会うことが楽しみだった。だから恋をしているのか、としばらく考えたことはあった。
でも、その人には恋人がいた。とても気の良い人。少し話しただけで、あたしは彼女のことも好きになった。

その瞬間、これは恋じゃないなって思った。
あたしはちっとも嫉妬していなかった。
お似合いだから、悔しいけど諦める、とかそんな気持ちはわいても来なかった。
ただ、彼も、彼女も、良い人で、仲良くなれて嬉しいなって思っただけ。

だから、結局憧れてたんだろうな、って思う。
とても素敵な彼に、あたしはきっと憧れてたんだろう。
幸せになって欲しいな、と思った。本当に、思った。

親友は時々あたしに電話してくる。涙混じりの声で。
そのたびに、あたしは思ってしまうの。

恋なんて要らない。
恋なんて知らない。
幸せすぎる瞬間が、崩れることが怖すぎるから。

それで、良いの。

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気づけば10000hitです。
なんだか判らないけど、嬉しいです、とても。
これからも、気まぐれに私の文章を見てただければ、と思います。

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