魔女。

数百年前、大規模な魔女狩りが世界中で行われた。
罪のない、普通の女性が、次々と火に炙られ、首を落とされた。
誰もが魔女を憎み、そして怯えた。
次は誰の番なのだろう、と。

ある日、殺された一人の女が死の間際に呟いた。
「本物の魔女を作り出し、私を殺した誰かを殺してやる」
呪いの言葉に、処刑場に漂っていた魂は同調した。
殺された魔女の誰もが、自分の死に不満を持っていたから。

汚れた血と、腐った肉と、
乾いた骨と、抜け落ちた髪。
そうして、死んだばかりの女の腹を使って、一人の娘が生まれた。

娘は生まれてすぐに、十歳程の姿に成長していった。
自分が誰なのか、何のために存在するのか。
生まれたばかりの魔女は、何も知らなかった。
だが、頭の中で生みの親たちの呪いの言葉が響き渡るのだ。
殺せ、殺せと。

気が狂いそうにな激痛に苛まれ、魔女は一人の人間に向かって言葉を投げつけた。

死んでしまって。

人間は、胸を押さえたかと思うと、すぐに動かなくなった。
これが、生みの親が娘である魔女に与えたもの。
魔女の呪い。
どれほどまでに心で抵抗しようとしても、身体は魔女の言葉に逆らえず、そのまま死を受け入れてしまうというもの。

魔女は自分の運命を悟った。
復讐の道具として生まれた娘を、愛してくれる者などどこにもいない。
生みの親の復讐は、愚かで、幼稚で、それなのに悲しく苦しいものだった。

復讐を終えた魔女は、自らの存在理由を探して旅に出た。
人として。