My Sweet.

2003年7月17日
その女に触れた時、甘い香りがしたことを覚えている。

褐色に染まった肌は酷く蠱惑的で、しっとりと光を放っている。
情熱的な赤とも言える髪は豊かで、柔らかく指先に絡みつく。
淡い青の瞳は、荒野に生まれたたった一つの泉のようにしっとりと濡れている。
そして、ふっくらとした唇に、髪と同じ色のルージュを引き、ひっそりと女は微笑むのだ。

男を侮っている訳ではない。
軽んじている訳でもない。
けれど、その笑みは常に男を誘っている。

極めの細かい肌に触れ、見た目以上に豊満な身体を味わう。
女が掠れた声を上げるたびに、空気の中に甘い香りが漂っていく。
体臭とも香水とも違う、女自身の匂い。
極上の美酒のように、男の頭を狂わせる。クラクラする程に甘い香り。

快感に身をまかせ、うっとりと微笑みながらも、女の青い瞳には静けさが広がっている。
身体を求めることの虚しさを味わいながら、そこから抜け出せない自分を嘲るかのような凪ぎ。

蝶だ。そう、男は思う。
ゆらりゆらりと、手を伸ばせば届きそうな距離を漂う蝶。
閉じ込めたとて、自分の物には出来ない、一匹の蝶。

そして自分は、その蝶に魅せられた愚かな蜘蛛。

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