「永遠に?」
赤毛の魔女が首を傾げた。
永遠という言葉の意味が掴めない。そんな顔をしながら、不思議そうに、可愛らしく。
「そう。永遠に。もしくは私が許されるまで」
言葉を返しながら一つ頷くと、自然と吐息が口から零れた。溜息だ。
平静を装っていても、やはりこの言葉を口にしたくはないのだろう。
永遠という言葉も、自分の昔話も、どれも本当は聞きたくない言葉でしかない。
「永遠とは、何?」
首を傾げたまま、魔女が問う。
大きな黒い瞳が、瞬きをすることもなくこちらを見ていた。
心の奥底まで、見透かされそうな程に透明な瞳と、ひんやりとした視線。
その視線は、知られたくない部分に押し入ることは決してしない。
ただ、表面をそっと撫でて通り過ぎていく。
答えを促すかのように。
「終わりがないということ」
短く答えると、魔女は今度こそ不思議そうな顔をした。
「では、あなたはずっとそのままだというの?」
それに対して、可哀想とか、当然だとか、そう言った感情など全く持っていない声で、もう一度魔女は問うた。
純粋に疑問なのだろう。
ただ、それだけ。
「それが、罰だから」
更に短く答える。
本当は言葉になどしたくない。けれど、これは紛れもない事実。逃れることなどできはしない。
罪を犯したものに対し、罰があるのは当然のこと。
それより何より、贖罪の機会を与えてくれたことを喜ぶべきなのだろう。
けれど、永遠という言葉には今では恐怖を覚えてしまう。
贖うことができない罪。
贖罪は終わることもなく、明日も明後日も、十年後も百年後までも続いていく。
「許されたいのね」
気づくと魔女はすでに視線を外していた。
少しばかり俯いて呟かれた小さな言葉は、何故か胸の奥を深く抉った。
「許されたいのね、あなたは」
魔女はもう一度呟いた。とても悲しげに。
「…わからない」
情けない答えを返すと、魔女が少しだけ笑ったのが、空気の流れでわかった。
そうして、魔女は顔を上げ、もう一度真っ直ぐな視線をこちらに向けた。
透明な黒い瞳は、やはり心の内をそっと撫でていく。
けれど、先程よりもそれはどこか暖かかった。
思わず、涙を流したくなる程に。
「永遠とは」
魔女は厳かに呟いた。
小さな娘だ。特別美しい訳でも、特別賢い訳でもない。
けれど、誰よりも純粋な、生まれたばかりの魂は、何よりも神々しく思えた。
「永遠とは刹那があるからこそ成り立っているのだと思う」
言葉を切り、少しだけ首を傾ける。
わかるか、と問い掛けるように。
「光があるからこそ、影が生まれる。友愛があるために、孤独を感じる。赦しもまた同じこと」
魔女は瞳を伏せた。
そして言い放った言葉は、不思議と絶対的な力を持っているような気がした。
「罰とは罪を償うためのもの。許されるためのもの。永遠は、刹那の連続でしかない」
それだけ言い、誰よりも優しい魔女は微笑んだ。
救いを与えようとも、決して許そうとはしない。
だが、それこそが彼女の優しさであり、思いやりであるのだろう。
私は、地上で神を見た。
赤毛の魔女が首を傾げた。
永遠という言葉の意味が掴めない。そんな顔をしながら、不思議そうに、可愛らしく。
「そう。永遠に。もしくは私が許されるまで」
言葉を返しながら一つ頷くと、自然と吐息が口から零れた。溜息だ。
平静を装っていても、やはりこの言葉を口にしたくはないのだろう。
永遠という言葉も、自分の昔話も、どれも本当は聞きたくない言葉でしかない。
「永遠とは、何?」
首を傾げたまま、魔女が問う。
大きな黒い瞳が、瞬きをすることもなくこちらを見ていた。
心の奥底まで、見透かされそうな程に透明な瞳と、ひんやりとした視線。
その視線は、知られたくない部分に押し入ることは決してしない。
ただ、表面をそっと撫でて通り過ぎていく。
答えを促すかのように。
「終わりがないということ」
短く答えると、魔女は今度こそ不思議そうな顔をした。
「では、あなたはずっとそのままだというの?」
それに対して、可哀想とか、当然だとか、そう言った感情など全く持っていない声で、もう一度魔女は問うた。
純粋に疑問なのだろう。
ただ、それだけ。
「それが、罰だから」
更に短く答える。
本当は言葉になどしたくない。けれど、これは紛れもない事実。逃れることなどできはしない。
罪を犯したものに対し、罰があるのは当然のこと。
それより何より、贖罪の機会を与えてくれたことを喜ぶべきなのだろう。
けれど、永遠という言葉には今では恐怖を覚えてしまう。
贖うことができない罪。
贖罪は終わることもなく、明日も明後日も、十年後も百年後までも続いていく。
「許されたいのね」
気づくと魔女はすでに視線を外していた。
少しばかり俯いて呟かれた小さな言葉は、何故か胸の奥を深く抉った。
「許されたいのね、あなたは」
魔女はもう一度呟いた。とても悲しげに。
「…わからない」
情けない答えを返すと、魔女が少しだけ笑ったのが、空気の流れでわかった。
そうして、魔女は顔を上げ、もう一度真っ直ぐな視線をこちらに向けた。
透明な黒い瞳は、やはり心の内をそっと撫でていく。
けれど、先程よりもそれはどこか暖かかった。
思わず、涙を流したくなる程に。
「永遠とは」
魔女は厳かに呟いた。
小さな娘だ。特別美しい訳でも、特別賢い訳でもない。
けれど、誰よりも純粋な、生まれたばかりの魂は、何よりも神々しく思えた。
「永遠とは刹那があるからこそ成り立っているのだと思う」
言葉を切り、少しだけ首を傾ける。
わかるか、と問い掛けるように。
「光があるからこそ、影が生まれる。友愛があるために、孤独を感じる。赦しもまた同じこと」
魔女は瞳を伏せた。
そして言い放った言葉は、不思議と絶対的な力を持っているような気がした。
「罰とは罪を償うためのもの。許されるためのもの。永遠は、刹那の連続でしかない」
それだけ言い、誰よりも優しい魔女は微笑んだ。
救いを与えようとも、決して許そうとはしない。
だが、それこそが彼女の優しさであり、思いやりであるのだろう。
私は、地上で神を見た。
コメント