『今更』
2003年8月25日好きって言われた時は本当に嬉しかった。
いつもいつも、私は何かに怯えてた。
自分の一挙一動が誰かに見られていて、変なことをしたら笑われるんじゃないかって。
例え笑われなくても、変な奴って思われて、嫌われたり、噂になったりするんじゃないかって。
自意識過剰と言ってしまえばそれだけ。
だけど、だけど、とても怖かった。
誰かに見られている自分が、『普通』であるように、いつだって虚勢をはってた。
教室に居る時は、誰かと話さなきゃいけないような義務感に追われてた。
独りでいたら、暗い人とか言われるんじゃないかって思ってたから。
時々、本を読んだりもしたけど、その本にもきちんとカバーをつけて、何を読んでるのかはわからないようにしてた。
だって、私が読む本が『普通』とは限らないから。
制服のスカートを折って、短すぎず長すぎない長さにする。膝上五センチくらい。
ワイシャツの一番上のボタンは締めない。息苦しいし。
髪の毛は染めたりしなかったけど、肩に届くか届かないかくらいにしてた。
元々髪の量は多いから、美容院で綺麗に透いてもらった。
家に帰ったら、ぼんやりとテレビを眺めた。
明日、学校でそんな話題になった時に、何も知らないっていうのはちょっと寂しいから。
一つ二つなら良いけど、全部知らないとなると、それってやっぱり『普通』じゃない気がする。
机の上にほったらかされた携帯は、当然のように鳴らない。
自分から電話したり、メールを送ったりすることはあんまりないから。
迷惑かもしれない。そう思ったら何にもできなくなっちゃう。
でもね。ある日気づいたの。
他人に見られることを意識して振る舞ってる私は、本当の私じゃないって。
当たり前のことなのに、それにようやく気づいた時は愕然とした。
学校の誰も、本当の私を知らない。
私がどんな音楽が好きで、どんな本を読んで、どんなテレビを見て、何を思っているのか。
知ってる人は、ほとんどいないんじゃないのだろうか。
今まで築きあげてきたものが、バラバラに砕け散ったような気がした。
高校生活最後の冬。
受験勉強で忙しい中、私は告白された。
どうしてって聞いた。
本当の私なんか、知らないはずなのに。それなのに、どうして好きって言えるのか、わからなかった。
そうしたら、彼はどうしてって言われてもって口籠もりながら、無難な理由を言ってくれた。
それこそ、私が感じる『普通』な理由。
好きになったから、だから好き。
それから高校に行ってる間、彼とはつきあっていた。
だけど、私は彼にどう振る舞えばいいのかわからなかった。
学校にいた私は、見せかけのもので、本当の私は違う。
好きでもないテレビを見て、ぼんやりとした感想を言っていただけ。
いつだって、明確な意思表示ができなかった。
だから、彼にはどの自分を見せれば良いのかがわからなかった。
気づけば、彼とも無難な会話しかできなくなっていた。
そうして、高校を卒業する頃、私たちは別れた。
当時は頻繁になっていた携帯を見ると、あの頃のことが鮮明に思い出される。
いつも一人で帰っていたけど、彼と一緒に駅まで歩いたこと。
試験勉強でわからないところがあって、相談したりされたりしたこと。
困った時に小首を傾げる彼の仕草。
それらは、高校生活の灰色の記憶の中で、色鮮やかに私の脳裏に焼き付いている。
この間、彼を交差点で見かけた。
その隣を歩いている女の子も、一緒に見かけた。
楽しそうに笑っているのを、見かけた。
それを見て、ようやく気づいた。
私は彼のことが本当に好きだったんだ。
普通とか、変とか。
そんな建前なんかどうでもよくて、本当は彼だけが好きだった。
まわりの目なんかどうでもよくなるくらいに、それくらいに彼が好きだった。
今更。今更。
やっと気づいた。
彼と一緒に居る時、私は彼の目だけを気にしてた。
彼に嫌われたくなくて、ずっと好きで居て欲しくて、虚勢を張ったり、強がったりしてた。
でもそれは、当たり前のことで、とても自然なこと。
それなのに、私は自分の心ばかり考えていて、彼の心を見ていなかった。
それじゃ、駄目だよね。
それじゃ、駄目で当たり前だよね。
今更。今更。
どうしようもないことだけど。
あなたにごめんなさいとありがとうが言いたくて、仕方がないの。
いつもいつも、私は何かに怯えてた。
自分の一挙一動が誰かに見られていて、変なことをしたら笑われるんじゃないかって。
例え笑われなくても、変な奴って思われて、嫌われたり、噂になったりするんじゃないかって。
自意識過剰と言ってしまえばそれだけ。
だけど、だけど、とても怖かった。
誰かに見られている自分が、『普通』であるように、いつだって虚勢をはってた。
教室に居る時は、誰かと話さなきゃいけないような義務感に追われてた。
独りでいたら、暗い人とか言われるんじゃないかって思ってたから。
時々、本を読んだりもしたけど、その本にもきちんとカバーをつけて、何を読んでるのかはわからないようにしてた。
だって、私が読む本が『普通』とは限らないから。
制服のスカートを折って、短すぎず長すぎない長さにする。膝上五センチくらい。
ワイシャツの一番上のボタンは締めない。息苦しいし。
髪の毛は染めたりしなかったけど、肩に届くか届かないかくらいにしてた。
元々髪の量は多いから、美容院で綺麗に透いてもらった。
家に帰ったら、ぼんやりとテレビを眺めた。
明日、学校でそんな話題になった時に、何も知らないっていうのはちょっと寂しいから。
一つ二つなら良いけど、全部知らないとなると、それってやっぱり『普通』じゃない気がする。
机の上にほったらかされた携帯は、当然のように鳴らない。
自分から電話したり、メールを送ったりすることはあんまりないから。
迷惑かもしれない。そう思ったら何にもできなくなっちゃう。
でもね。ある日気づいたの。
他人に見られることを意識して振る舞ってる私は、本当の私じゃないって。
当たり前のことなのに、それにようやく気づいた時は愕然とした。
学校の誰も、本当の私を知らない。
私がどんな音楽が好きで、どんな本を読んで、どんなテレビを見て、何を思っているのか。
知ってる人は、ほとんどいないんじゃないのだろうか。
今まで築きあげてきたものが、バラバラに砕け散ったような気がした。
高校生活最後の冬。
受験勉強で忙しい中、私は告白された。
どうしてって聞いた。
本当の私なんか、知らないはずなのに。それなのに、どうして好きって言えるのか、わからなかった。
そうしたら、彼はどうしてって言われてもって口籠もりながら、無難な理由を言ってくれた。
それこそ、私が感じる『普通』な理由。
好きになったから、だから好き。
それから高校に行ってる間、彼とはつきあっていた。
だけど、私は彼にどう振る舞えばいいのかわからなかった。
学校にいた私は、見せかけのもので、本当の私は違う。
好きでもないテレビを見て、ぼんやりとした感想を言っていただけ。
いつだって、明確な意思表示ができなかった。
だから、彼にはどの自分を見せれば良いのかがわからなかった。
気づけば、彼とも無難な会話しかできなくなっていた。
そうして、高校を卒業する頃、私たちは別れた。
当時は頻繁になっていた携帯を見ると、あの頃のことが鮮明に思い出される。
いつも一人で帰っていたけど、彼と一緒に駅まで歩いたこと。
試験勉強でわからないところがあって、相談したりされたりしたこと。
困った時に小首を傾げる彼の仕草。
それらは、高校生活の灰色の記憶の中で、色鮮やかに私の脳裏に焼き付いている。
この間、彼を交差点で見かけた。
その隣を歩いている女の子も、一緒に見かけた。
楽しそうに笑っているのを、見かけた。
それを見て、ようやく気づいた。
私は彼のことが本当に好きだったんだ。
普通とか、変とか。
そんな建前なんかどうでもよくて、本当は彼だけが好きだった。
まわりの目なんかどうでもよくなるくらいに、それくらいに彼が好きだった。
今更。今更。
やっと気づいた。
彼と一緒に居る時、私は彼の目だけを気にしてた。
彼に嫌われたくなくて、ずっと好きで居て欲しくて、虚勢を張ったり、強がったりしてた。
でもそれは、当たり前のことで、とても自然なこと。
それなのに、私は自分の心ばかり考えていて、彼の心を見ていなかった。
それじゃ、駄目だよね。
それじゃ、駄目で当たり前だよね。
今更。今更。
どうしようもないことだけど。
あなたにごめんなさいとありがとうが言いたくて、仕方がないの。
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