『水皇子』

2003年9月15日
手の平を動かすと、水がふわりと浮かび上がった。
目を瞑っていてでも、その水の動きははっきりと認識できる。
水を操ることなど、実にたやすい。
それは羽水にとって、呼吸をすることに等しいのだから。

けれど、それだけ。
羽水は水を操ることにかけては、一族のなかでも右に出る物はそうそういない。
だが、他の術に関しては、小さな子供の横に並ぶのが精一杯なのだ。
そんな自分が彼は嫌いだった。

羽水には親友がいる。
水も風も炎も大地も、思いのままに動かすことのできる親友だ。
一族のなかで最も力を持っていると言っても過言ではない。
呼吸をするように、全てを思いのままに操った。

親友は控えめに見ても良い奴だった。
だからこそ、羽水は辛かった。
ただ、息苦しかった。

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