『優しい愛』

2003年10月13日 魔女
 愛し方なんて、誰も教えてくれないじゃない?

 不器用に傷つけた。だけど抱きしめればその傷が癒えると信じてた。キスすれば涙は止まると思ってた。
 莫迦だよね。若かったんだ。

 そうやって、傷つけて傷ついて、あたしたちは愛し合ってた。
 相手を傷つけることは、自分を傷つけることと同意語で、そんなことにも気づかないまま、二人で走り続けたの。
 痛かったよ。苦しかったよ。でもそれ以上に楽しくて愛しくて恋しくて。笑ってた。

 別れる直前は、本当に切なかった。
 抱き合った体が火傷しそうなほどに熱くて、全身がちくちく痛んだ。触れるだけのキスは、甘さなんて欠片もなくて、涙の味がした。
 それでもあたしは泣かなかったの。涙なんか溢れなかった。けどね、泣くことだけが悲しみの表現だなんて思わないの。
 笑っていて欲しかった。泣かないで欲しかった。ただそれだけだった。

 今はもう、あんな愛し方はできない。あんな若くて苦い恋もできない。
 だけどね、あの愛は、あの傷つけ合いながらも互いのことばかりを考えていた愛は、どこまでも優しかったと信じてるの。

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