『喪』

2003年10月24日
 いつもとは打ってかわって、その人は黒い服を身に纏っていた。
 今まではいつだって、雪や雲のような白を身につけていた。儚く眩しく、そして鮮烈な白。眩暈がするほどの光と、触れれば壊れてしまう儚さに、誰もが魅了された。

 けれど黒を身に纏った瞬間、凡てが変わった。
 儚さはそのままに、けれど本質が変わってしまった。無邪気なまでの白さは、黒く染まることで悲しみを帯びた。吸い込まれそうな闇は深く、無限を作り出している。
 眩暈がする。地面が揺れている。

 黒く染まったその人は、肌の白さばかりが目立っていた。細い腕。細い足。細い首。

 儚さが全身で女を主張している。

 吐き気がした。

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