『灰寄せ』

2003年10月28日
 灰を集めましょう。一粒たりとも、あなたを残しはしない。一かけすら残さず、あなたを手に入れるために。

 今更温もりなど求めません。肉の柔らかさも、皮膚の暖かさも、吐息の生ぬるい体温も。今更、今更。
 果ててしまえば消えてしまう。
 焼いてしまえば尚更に。

 灰を集めましょう。あなたの灰を小さな壺に。閉じこめてしまいましょう。もう二度と消えてしまわぬように。遠くへ行ってしまわぬように。

 今更思い出すのはあなたの躯ばかり。大きな掌、黒い瞳、長い指、細い指先、暖かい体温。今更、今更。
 もう二度と手に入らないもの。
 焼いてしまえば尚更に。

 灰を集めましょう。あなたを忘れないように。これ以上あなたを喪わないように。私の壺にあなたの躯を。

 今更気づいた思いの大きさ。海よりも深く、河よりも急で、空よりも果てしなく、水たまりよりも浅はかな思い。今更、今更。
 それでもまだ消えない思い。
 焼くこともできないから尚更に。

 灰寄せしましょう。あなたの灰を。
 灰寄せしましょう。あなたの思いを。
 灰寄せしましょう。私の思いも。

 全部焼いて、形を変えて、それでも私のものにしましょう。

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