『君だけ足りない』

2003年11月3日
 青い空。白い雲。碧の風。
 ――通り抜け、遙か彼方へ。

 緑の峰。紅い夕焼け。虫の羽音。
 ――時間が止まるような錯覚と、デジャビュ。

 鳥の囀り。水のせせらぎ。小さな鼓動。
 ――命の形、溢れてとどまらない不思議な何か。

 大地の温もり。人肌の熱。醒めた夢。
 ――詰りたいほどの気持ちと、憧れ、尊敬。

 声。
 ――誰かの音。遠い記憶。今はもう消えたもの。

 君が。
 ――笑う時の癖、指先の動き、聞こえない声。

 君が足りない。
 ――空虚。空虚。空っぽの世界。終わりが見える。

 君だけ足りない。それ故に。

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