『I wanna know more』

2003年11月9日
 香月は不機嫌そうな顔で眉を顰めると、上目遣いにキールを睨んだ。

「私が、嫌なのよ」

 わかるでしょうと呟き、小さく一つ溜息を吐く。
 それでもキールが黙っていると、今度は少しだけ俯いた。そうやっている彼女を見下ろすと、肩の線がやけに細く見える。獣のような耳も、心なしか力無くうなだれているように見える。

「あなたが嫌だと言うなら、私には何もできない。けど、あなたが嫌でないならば、私の好きにしたって良いじゃない」

 だから、と香月は続ける。いくらか声が震えていたのは、キールの気のせいだったのかもしれない。

「だから、もう少しだけ、あなたに近づきたいの。――あなたのことを、知りたいの」

 「駄目?」と上目遣いで尋ねられ、キールは心の中で空を仰いだ。
 完全敗北だと思った。

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