『SATIE』

2003年11月22日 魔女
 夜が来ると、太陽が隠れ、青空は濃い藍色に染まる。そんな当たり前のことに、何故か涙が溢れそうになる。

 輝く星の群れ。白く、紅く、青く輝く星達。あの小さな光は、誰かが零した涙に似ている。小さく弱く、暖かく切ない光。
 雨に濡れた月。しっとりとした銀色の光は、あなたの瞳に似ている。涙に潤み、感情を露わにしてしまう、愛しくも儚い光。

 夏の足音が近づいてくる。
 夏の匂いが背中を押してくる。
 夏の嘘が胸の中で熱を持って暴れ出す。

 さようなら。
 お別れのキスの後で、聞こえてきた小さな唄の数々。言葉にならない思いのこもった、自らを癒すためだけの唄。優しさよりも傲慢さばかりが目立つ唄。けれど、涙が溢れるほどに愛おしい。

 何故、愛してるなど言ったの?
 なのに何故、私を殺さなかったの?

 巡り続ける疑問も、いつか解ける日が来るのだろうか。その前に夏が来るのだろうか。あの蒸し暑く、どろりとした湿気の中で、あなたを愛したあの夏が。
 今はもう、ここにはいないあなたを、愛してるのかと聞かれたら、恋してると答えるだろう。もう、愛していない。何故って、私は今あなたにとても会いたいのだから。

 どんなに耳を塞いでも、唄は途切れることなく聞こえてくる。我が侭で傲慢で、けれど愛しい人を思うことしか知らない不器用な唄が。その思いの形が間違っているとしても、走り続けることしか出来ない若い唄が。

 唄は聞こえ続ける。
 けれど、愛はもう終わってしまった。

 ねぇ、終わりだと言って。

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