『Miss.Genocider』

2004年2月4日
 殺人鬼の彼女は煙草を吹かしながら、聞いた。
「お前、死にたい訳?」
 肯と答えると、彼女はふぅんと頷いた。
 殺さないのかと尋ね返すと、彼女は嫌そうな顔をして見せ、
「無料奉仕はしない主義なんだ」
と呟いた。
 その言葉になんとこたえようか迷っていると、彼女は静かに続けた。
「死にたい奴を殺したってつまらないだろ」
 人殺しに面白いも何もあったものじゃない。そう反論すると、彼女は楽しげに声を上げた。
「そりゃ、そうだ」
 でもな、と彼女は微笑む。
「何もせず、ただ存在して、ただ死なないでいるのはつまらないだろ」
 それには肯定。
「だから私は何とかして、命ってものを感じたかった。その一番手っ取り早い方法がこれだった。ただそれだけさ」
 無茶苦茶な論理だと反論するには、自分は生き物に対しての感心がなかった。けれど、そうかと納得するには、少しばかりこの世界に執着しすぎていた。
「まぁ、お前は長生きしないよ。そんな顔してる」
 にやりと笑い、殺人鬼の彼女は去っていった。

 彼女は未だに捕まっていない。
 恐らく、世界のどこかで、誰かを殺しながら命の存在を探し続けているのか、自分の命そのものを一瞬だけ感じ取って、死んでしまったかのどちらかだろう。
 時々考える。
 あのとき、死にたくないと、嘘でも良いから答えていたらどうなっていたのだろう、と。

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