『Liberation』
2004年2月5日 その他連作 一般人には立ち入りが禁止されている区域に入り込み、呆気なく警備員に捕まり、少年はこの牢獄に押し込められた。
この世界では、人間さえコンピュータで管理されている。そのため一度犯罪者と認定されると、その後の人生をずっと苦労することになる。文字通りレッテルを貼られ、公共の施設からは追い出される。
どれだけ演技力があろうと、どれほど肉体を改造しようと、登録されたDMAは取り消せない。そう言うことだ。
これから先のことを考え、少年は溜息を吐いた。
『よう、少年。顔が暗いネェ』
唐突に少女の声が聞こえ、彼ははっと顔を上げた。隣の牢獄に誰かがいたのだろうか。いや、人間の気配は何処にもなかった。
「誰だ!」
『あたしはあたしサ。何をやったんだい、少年』
甲高い少女の声は、少年のことなどお構いなしに喋り始めた。彼の質問には答えない癖に、勝手に質問を投げかけてくる。
『んん? 元気がないネ。人生明るく生きなきゃ損するぞ』
何が楽しいと聞きたくなるほどに、楽しげに笑いながら、彼女は叫ぶように喋り続けた。はっきり言って、新手の拷問かと思うほどに辛い。
「あんたがいなきゃ、もう少し元気かもしれない…」
『つれないネェ。唯一の話し相手じゃないか』
くつくつと笑いながら声は返事を寄越す。
その笑い声が気に障り、返事をするのをやめて無視しようと、心に決めた。
だが、一層しつこく話しかけられ挫折した。大音量で意味不明な言葉を叫ばれるよりは、おとなしくテンションの高い会話につきあった方がマシだ。
「何を話すって言うんだ?」
うんざりしながらも、会話を続ける。
『この塔からは出られそうか? 地上に手は届きそうか? ディクス』
この上なく自然に話しかけられ、首を振ってから、少年は気がついた。彼女は今なんと言った。
「なんでお前が俺の名前と投獄理由を知ってるんだ!?」
呆気にとられながら叫び返すと、声はきゃらきゃらと笑った。
『んん? あたしはココの神様だからサ。知らないことなんて一つもないヨ』
「ふざけるな」
『ふざけちゃいないサ。本当のことだよ、ディー』
馴れ馴れしく愛称を呼びながら、声は少年をからかうように喋り続ける。
「神なんていない」
『まぁネ』
あっさりとディクスの言葉を認めると、声は含み笑いをしながら、低く囁いた。
『でもね、あたしはこの世界の神なんだよ。巨大コンピュータ群を支配する管理脳、三柱が一柱、リバーさ』
この世界では、人間さえコンピュータで管理されている。そのため一度犯罪者と認定されると、その後の人生をずっと苦労することになる。文字通りレッテルを貼られ、公共の施設からは追い出される。
どれだけ演技力があろうと、どれほど肉体を改造しようと、登録されたDMAは取り消せない。そう言うことだ。
これから先のことを考え、少年は溜息を吐いた。
『よう、少年。顔が暗いネェ』
唐突に少女の声が聞こえ、彼ははっと顔を上げた。隣の牢獄に誰かがいたのだろうか。いや、人間の気配は何処にもなかった。
「誰だ!」
『あたしはあたしサ。何をやったんだい、少年』
甲高い少女の声は、少年のことなどお構いなしに喋り始めた。彼の質問には答えない癖に、勝手に質問を投げかけてくる。
『んん? 元気がないネ。人生明るく生きなきゃ損するぞ』
何が楽しいと聞きたくなるほどに、楽しげに笑いながら、彼女は叫ぶように喋り続けた。はっきり言って、新手の拷問かと思うほどに辛い。
「あんたがいなきゃ、もう少し元気かもしれない…」
『つれないネェ。唯一の話し相手じゃないか』
くつくつと笑いながら声は返事を寄越す。
その笑い声が気に障り、返事をするのをやめて無視しようと、心に決めた。
だが、一層しつこく話しかけられ挫折した。大音量で意味不明な言葉を叫ばれるよりは、おとなしくテンションの高い会話につきあった方がマシだ。
「何を話すって言うんだ?」
うんざりしながらも、会話を続ける。
『この塔からは出られそうか? 地上に手は届きそうか? ディクス』
この上なく自然に話しかけられ、首を振ってから、少年は気がついた。彼女は今なんと言った。
「なんでお前が俺の名前と投獄理由を知ってるんだ!?」
呆気にとられながら叫び返すと、声はきゃらきゃらと笑った。
『んん? あたしはココの神様だからサ。知らないことなんて一つもないヨ』
「ふざけるな」
『ふざけちゃいないサ。本当のことだよ、ディー』
馴れ馴れしく愛称を呼びながら、声は少年をからかうように喋り続ける。
「神なんていない」
『まぁネ』
あっさりとディクスの言葉を認めると、声は含み笑いをしながら、低く囁いた。
『でもね、あたしはこの世界の神なんだよ。巨大コンピュータ群を支配する管理脳、三柱が一柱、リバーさ』
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