『夏』

2004年3月27日
 彼女の季節は夏だった。
 例えようもないほど、夏だった。彼女は夏でしかなく、冬にも秋にも春にもなれなかった。
 曖昧にぼかした心地よさには触れられず、かといって身を切る寒さのような、鋭さは持ち合わせなかった。

 だから彼女は夏だった。
 消去法で手に入れた季節。生まれて、名前を付けられたときから、それは変わることのない事実。
 春は母のもので、秋は父のものだった。冬は兄のもので、余っていたのは夏だけだった。

 だから彼女は夏なのだ。
 生まれたときから、きっと死ぬまで。

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