『Dear another myself』

2004年3月30日
 私達はとても仲の良い双子だった。
 似ていないからと言うわけではなく、似すぎていたから仲が良かったのだと、最近思う。

 喧嘩はよくした。
 けど、なんとなく、やる気の起きない喧嘩だった。途中で相手の言い分がわかってしまうし、向こうもこっちの言い分がわかってしまう。
 だから叫ぶほどのことで、なくなってしまうのだ。
 そうして気づけば妥協点を探して、仲直りしているのが常だった。

 二人揃って、兄に懐いていたけれど、その愛情を独り占めしようとは思わなかった。
 貴方が嬉しければ、私も嬉しい。そんな博愛精神を、互いにだけは惜しみなく発揮できたし、私達は元々、みんなで楽しむのが好きだった。
 同じ気持ちを共有するのが好きだったし、みんなで何かを成し遂げるのも好きだった。
 兄も似たような性格をしていたから、三人で騒いで、三人で楽しんだ。

 彼女がいなくなってから、私の隣は空いたままだ。
 いつも一緒にいたから、なんだかそれは、とても不思議な感覚だった。自分の手足を持って行かれたような。否、それ以上。心臓とか脳みそを持って行かれたような。そんな気分。
 ぽっかり空いた隙間を見て、これが一人なんだろうか、と思う。
 他のみんなは、元から一人だ。けれど私達はずっと二人だった。だから一人という感覚が、いまいちわからない。
 ああ、寂しいんだと、気づいたのも、随分後になってからだったし。

 今でも思い出すのは、あのあどけない瞳。
 自分自身であり、自分とは正反対でしかない、あの眼差し。
 記憶の中で蘇る光景は、いつだって夏のままだ。

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