愛すべき貴方へ。

 貴方がいなくなってからというもの、私は、何も変わってないけど、大きく変わってしまった気がしてならない。
 最初は何が起きたのかわからなかった。ただ呆然として、振り返れば、貴方がいるんだと信じていた。それでも結局、振り返ることなんかできなかった。本能的に身体の方が悟っちゃったんだろうね。もう、貴方はいないんだって。
 その次に、やっと空白を感じるようになった。貴方がいなくなったことを、脳みそも理解し始めてくれたみたい。遅すぎるよね。でもさ、貴方はいつも隣にいたんだ。それが当然で、必然で、偶然の欠片もなかったから。馬鹿みたいだけど、驚いた。ああ、一人なんだ、と。
 最近は慣れてきた。人間って強いね。慣れって怖いね。どれだけ幸せでも、もっと大きな幸せが欲しくなるように、どれだけ寂しくても、もうその気持ちを寂しさと感じなくなったよ。辛いね。悲しいね。
 けど、何が一番怖いかって、何も怖くないこと。
 寂しかったよ。辛かったよ。苦しかったよ。だけど、今じゃ、そんな気持ち何処にもない。笑って、馬鹿みたいに騒いでる。無理してるんじゃないんだ。本当に。不思議だけど、マイナスの感情っていうのが、自分の中に見付からない。
 泣くこともない。
 タマネギを切ったり、欠伸をしたり、そんなのばっかり。泣かない。私は、泣けない。例外は痛い時くらい。でもそれだって、ほとんどなくなった。どれだけ痛くても、なんだか遠いんだ。全部。怪我をしたって、それが何って感じ。
 おかしいかな。おかしいよね。少なくとも、なんか変だと思う。で、珍しく考えた。
 結論としては、やっぱり貴方がいないから。
 私達、二人で一人って訳じゃなかったけど、どこかしら共有している部分があったよね。それが多分、寂しいとか悲しいって気持ちだったんじゃないかと思う。
 だって、独りじゃ寂しいだなんて、わからないよね。
 だから貴方がいないと、私は負の感情を見つけられない。私の心、返してよ。
 今、楽しいよ。辛いことなんて、一つもない。成績が悪くても、毎日は楽しい。友達はいるし、離れていても家族がいる。新しい出会いもあれば、別れもあるけど、携帯があるから連絡は簡単だしね。
 そう、別れは寂しくなんてないんだよ。
 ただ一つの形を除いては。もっとも、今の私じゃ、どんな形でも泣かないかもしれないけどね。

 ねぇ、貴方は結局、何処にいるんだろう?
 それだけが気がかり。会えるなら、会いたい。会えないなら、本当に諦めたい。もう会えない片割れを、私はいつまで待ち続ければ良いんだろう。
 本当はね、諦めてるよ。もう、会えないって信じてる。だって仕方ないじゃん、わかっちゃうんだから。わからない訳ないじゃん、貴方は私なんだから。
 でもね、もう一つだけ信じてる。
 貴方と私は別人なんだから、例え元が一つの細胞であったとしても、今は全くの別人なんだから。だから、わかるわけないって。私の直感は的はずれで、貴方はもう少ししたら、明日になったら目を覚ますって、心のどこかで信じてる。
 私の心は、半分貴方に持って行かれてしまった。
 ねぇ、返して。返しに来て。届けに来て。直接手渡して。笑いながら、遅くなってゴメンって言って。そうしたら、私も寝坊しすぎだって笑える。
 それから、ずっと会いたかったって、本当はずっとずっと会いたくて、寂しくて悲しくて仕方がなかったんだって、泣けるから。

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