私はショートケーキが好きだった。
 けれど、妹はチョコレートケーキが好きだった。
 買ってもらえる誕生日ケーキはどちらか片方。
 くだらないと言われるかもしれないが、私達はそれは真剣に、好きなケーキの素晴らしさを語ったものだ。子供だったから。
 結局、その年はショートケーキの勝利で終わった。兄がそっちが食べたいと言ったから。まさに鶴の一声。私達二人とも、それであっさりと引き下がった。
 引き下がったけれど、それでもちょっとだけふてくされていた妹を見て、私と兄が笑いながら、来年はチョコレートケーキにしようと言った。妹も頷いた。

 次の年、妹は隣にいなかった。
 けれど私はショートケーキを親に強請った。兄も何も言わなかった。

 私は。
 ショートケーキだって、構わなかった。隣に、あの子がいてくれれば。

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