『First Lover』

2004年5月6日
 中学校三年生の初夏、隣のクラスの男の子に告白されて、つきあい始めた。
 名前は忘れちゃったけど、シュウ君っていう子。バスケ部に入ってたけど、あんまり背が高くなくて、身長は今の私と同じくらいだったんじゃないかな。背伸びをすれば、丁度並ぶくらい。
 健康的に日に焼けた肌がとても綺麗だった。シュウ君はバスケ部だから、部活はいつも室内だったけど、昼休みに外でバスケをやってたから。ごつごつした腕とか、地面を蹴る足は今でも覚えてる。
 私はあんまり、恥ずかしがったりとか、そういうタイプじゃなかったから、つきあって一週間で手を繋いだ。成り行き。
 兄貴がいるせいか、男の人には割となれていた。大きい掌も、こんなものかと思っただけだった。
 一緒にベッドに入ったのは、いつだったっけ。覚えてないや。ぎゅとなったことは覚えてる。それが心だったのか、身体だったのか、それとも両方だったのか。それは判らないけど。

 確かにシュウ君のことは好きだった。
 だけどね、判らなかった。恋って気持ちも。愛って気持ちも。それに、私には千夏がいた。私と同じ顔で、同じ心を持って、同じ身体を持った妹がいた。
 その頃、千夏はもう眠っちゃっていたけど、それでもシュウ君は私を選んだんだろうか。別にどっちだって同じじゃないか。そう思ったら、終わっちゃった。
 シュウ君、ゴメンね。
 君のことは、本当に好きだった。短い黒髪を伝った汗も、こぼれ落ちた熱も。がさがさの指先も、所々かけた爪も。みんなみんな好きだった。
 バスケのコートを走る姿も、ボールを追いかける眼差しも、試合に負けたときの悔しそうな背中も、反対に勝ったときのはじける笑顔も。
 ゴメンね、シュウ君。
 誰が悪いのかな。私かな。ひょっとしたら千夏かも知れないし、シュウ君なのかもしれない。でも多分、私なんだろうな。

 サヨナラを告げたのは、冬だった。
 寒くて寒くて、仕方がなかった。元々寒いのは嫌いだったけど、それ以上にどこかが寒くて冷たかった。

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