『ぽろぽろり』

2004年5月10日
 身体を繋げる瞬間、彼女はいつも、思い出したように涙を零す。両方の目からたった一粒ずつ。真珠のように、透明な大粒の涙を、呆然としながら零す。
 痛みに嘆くわけでもなく、快感に溺れるわけでもなく。それでも彼女は涙を零す。

 ぽろり、ぽろりと。

 一度尋ねたことがある。何故、と。どうして泣くのか、と。
 彼女は少し思案した後、小さく笑いながら、言葉を零した。
「生きてるって気がするから、かな。意識してないけど、泣く瞬間まで、自分が泣いてることなんて判らないけど、涙が零れるの」
 その言葉は、ぽろりと溢れる涙に非道く似ていた。

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