『Sun Flower』

2004年6月7日
 ナツは向日葵みたいだね。
 季節が夏に向かい始める頃、親友が私のことをそう評価した。
 懐かしいな、と思った。ずっと前にも、同じことを言われたことがあったから。
 兄の言葉だ。私を花に例えようだなんて、酔狂か、そうでなければ気障なこと、兄貴以外にする筈がない。もしかしたら、両親は考えたかも知れないけど。

 窓を開け放つと、ねっとりとした空気がチリンと風鈴を鳴らした。その音を聞いても、さっぱり涼しい気持ちになんてなれない。ゆらりと白いカーテンがはためいた時の方が、私は涼しさを感じる。
 フローリングの横に寝そべり、クッションを枕代わりに微睡んでいた私に、兄が不意に声をかけた。
「お前は向日葵だな」
「……何、それ」
 重くなりつつあった瞼を薄く開き、聞き返すと、兄は喉の奥で笑った。
「花にたとえると」
「あー…、うん、そうかもね。なんか派手だし、大きいし。元気いっぱいって感じ?」
 向日葵の象徴するような、黄色やオレンジ色は好きだから、悪い気はしなかった。あの太陽みたいな大きな花も、割と好きだった。
 そう言うと、兄は優しげに笑って、それもあるけど、と続けた。
「向日葵は、太陽の方向に花を咲かせる。知ってるだろ?」
「なんとなくー」
「そうやって、太陽を追いかけ続けてるあたりが。結局、一カ所しか見えてないところが」
「…………」
 何か言い返そうと思った。
 けど、結局何も言わず、私はクッションに顔を埋めて。そうかもね、と小さく答えた。
 私にとっての太陽が、誰かだなんて、そんなことは明白すぎて考える価値さえない。置いていかれたから、追いかけてしまう。でも機敏には動けなくて、立ち止まってしまったり。

 太陽に囚われた向日葵は、一途に花を咲かせている。
 私はなるべく、太陽を見ないようにしながらも、手探りでいつも同じ者を探しているのだろう。

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