『夢の終わり』

2004年6月14日
 長い長い、本当に長い夢を見ていた。

 自分は強いと、彼女は信じていた。全てに対する圧倒的な強さはないけれど、誰かと対峙したときに決して負けない、そんな強さを持っていると。
 何があっても泣かない。
 何が起きても負けない。
 相手を負かせることはできなくとも、自分が傷つくことはなかった。堅い堅い守りを持っていたから。

 でも、その堅い守りは、一点だけとても脆かった。
 その一カ所を守るために、他の部分を堅くした。けれど指で触れられただけで、がらがらと崩れてしまうほどに、そこだけは弱かった。強くすることなどできなかった。諦めていた。
 弱くないと信じていた。
 脆くもなければ、崩れることもないと信じていた。
 信じていたから、強くいられたのだと、彼女はやっと気がついた。

 長い夢を見ていた。
 夢の終わりが訪れれば、もう強くはいられないということを、彼女は知っていた。
 だからひたすらに強いと、信じていた。

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