『静』

2004年7月28日
 立てる?
 そう聞かれ、首を振ると、彼女は仕方のない人と笑った。

 行ける?
 そう聞かれ、無理だと喘ぐと、彼女は寂しげに微笑んだ。

 じゃあ、私は行くから。
 そう言われ、行かないでと言えないままに、それでも裾をつかむと、彼女は同じ微笑みを浮かべ、そっと手を払った。

 さよなら。
 そう言われ、立ち上がることもできない自分は、結局取り残され、けれど彼女を恨むことの憎むこともできず、かといって誰よりも愛しいと思うこともできず、ただ小さな棘を残すばかりで。
 涙が零れた。

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