『空の下』

2004年9月14日
 出来損ないのお芝居が、いつ終わるのか。
 そんなことばかりが、どうしてか気になって仕方がない。

 しばらく前、ナツの昔の彼氏の話を聞いた。
 隣のクラスのバスケ部の子で、顔と名前は知っている程度の仲というか、別に知り合いでもなんでもなかったらしい。ただ隣のクラスだから、知識として存在は知っている。それくらいの関係。
 でも彼らは恋人同士になった。
 告白されて、断る理由がなかったからという、どうしようもない理由で。

 それだけでもう、溜息が出る。この子の感覚はさっぱり分からない。
 どうして好きでもない人と、付き合えるんだろう。どうしてほとんど見知らぬ人と、付き合えるんだろう。私には分からない。
 だけど二人は仲良くやっていったらしい。本当のことかどうかはわからないけど、ナツはあまり嘘は言わないから、多分事実なんだと思う。
 海に行ったり、学校に忍び込んで花火をしたり、バスケットの試合を見に行ったり、手を繋いだりと普通の恋人同士だったという話だった。
「とても好きだった」
 そう呟いて、幸せそうに笑いながら、彼女は続けて言った。
「だけど別れた」
 その理由を聞くと、ちょっと遠い何処かを見つめ、彼女は小さく笑った。
 楽しさの欠片のない、何かを諦めた笑い方で。

「振り返って、気づいて、戸惑ったら、すれ違ってた」

 だから別れたんだ。
 そう呟いて、ナツは天井を仰いで見せた。
 けれどきっと、彼女の視線はその向こうの空を見つめているのだろう。

 いつだって、この人はどこか遠い場所を見ている。
 だからきっと、視線がすれ違ってしまったのだと、思った。

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