恋をした。恋をしていた。
 眩しいほどに真っ直ぐで、愚かなほどに幼気な恋をした。

 「さよなら、しない?」
 唐突な言葉で、全てが終わった。
 彼女は少し遠くを見つめ、それが自然なのだと言わんばかりに呟いた。
 どうしてと聞き返すと、大きな猫のような瞳が、こちらを向いた。感情の薄い、ぼんやりとした光が宿った目は、初めて見るもので少し戸惑った。
「どうしてかな? でもね、もう無理だと思うんだ。ちょっとこの辺が――」
 自分でも不思議そうに言いながら、自らの胸を指さした。エナメルのようなピンク色の爪が光った。
「――もう、すれ違って、遠くなっちゃったから」
 ゴメンね。
 そう呟いた彼女は、本当にもう、どこか遠い場所へ行ってしまったように見えた。
 もう二度と、届かない。

 すれ違うと言うよりも、二人は遠ざかってしまった。
 その距離をどうしても埋めることができず、結局別れは来てしまった。
 けれど、いつかこの日が来ることなんて――

 ――ずっと前から知っていた。

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