『Nobody can help her』

2004年10月23日
 冷えた肌とさめた夢と、傷跡にも似た記憶の形。

 ベッドの上で彼女を抱き寄せると、冷えた素肌が体にぶつかってきた。
 首筋から肩胛骨を伝って背中を撫ぜると、ふっとため息にも似た吐息が首筋にかかって、何かがぞくぞくした。
 細い体を押しつぶすように抱き合い、白いシーツに彼女をつなぎ止めた。冷えた肌を、どうにかして温めようと、何かに抗うかのように。

 首筋にかかる吐息だけは、どんどん熱くなっていくのに、彼女の肌は最後までどこか冷めていた。この行為が、ただの遊戯でしかないことを、知っているかのように。夢から覚めるのではなく、最初から夢など見ていないかのように。
 きつく抱きしめて、抱きしめて、これ以上もないほどに抱きしめても、それでも冷えた肌に口づけ、どうしてか泣きたい気持ちになった。

 知っていたから。
 彼女の肌を温めてやることができるのは、決して自分ではないと。

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