『空の季節』

2004年10月25日
 夏というもの。

 夏は私の季節だと、誰もが知っているし、そう思っている。私だって、ずっとそう信じていたけれど、最近違うということに気づいてしまった。
 元々、夏はただの余り物だったのだ。春は母のもので、秋は父のもので、冬は兄のものだったから。残った夏を私たちがもらった。それだけのこと。
 そして気づいた。
 ああ、夏は私たちのものではなかったのだ。
 夏は、あの子のものだった。

 冬が近づいてくるけれど、空を見上げればそこにあるのは、どこまでも広がる青の青。夏の空が私の頭上には広がっている。終わらない夏の影響。私の空は、いつまでたっても夏のままだ。
 空っぽの夏を抱えたまま、私はいつまで立ちすくめばいいのだろう。
 時々叫び出したくなるのは、どうしようもないほどに、夏を憎んでいるからに違いない。これも最近気がついた。
 愛と憎しみは紙一重。ただひたすらに心を狂わせる激情。あまりに一途であまりに傲慢で、あまりに深すぎる思い故に。

 愛しているさ。大好きだよ。あの夏が。
 けれど夏は私のものではない。あの子のもので、あの子は夏の中で終わりを見つけ、確固たる夏を持ち去っていってしまった。もしかしたら、持ち帰ってくれるかもしれないけれど、そんな淡い期待は持てない。
 だから私の中の夏は、いつだって空っぽのまま。ひび割れ、傷つき、さらさらとすべてが流れ出してしまった季節なのだ。
 そんな季節を抱きしめながら、これが私のものなのだなんて、口が裂けたって言える訳ない。

 秋が来て、冬が終わって、春が訪れ、また夏が巡っても、溢れる気持ちとは裏腹に、全ては空のまま流れていく。

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