『あの日の憧憬』

2004年11月23日
 遠い日の幻。
 諦めてしまったからには、もう。

 部屋の片付けをしていたら、ふとアルバムに目がとまった。
 元々片付けなんて得意でも好きでもないし、さっきから古い雑誌を読んだり、小学校の卒業アルバムを見てたりして、部屋は散らかったまま。
 何も考えず、同じようにそのアルバムを手に取り、ぱらぱらとページをめくる。私と家族。時々友達の写真が混ざっているけれど、ほとんどが家族の写真だった。

 ああ。

 どの写真にも同じ顔が映っているけれど、それが誰であるのか、私には一目でわかる。並んでいても、一人でいても。同じ服を着ていたって、すぐにわかる。私か、あの子か。
 ふと自然に笑みが零れていた。
 とても懐かしくて、様々な記憶が頭の中で踊り出しては、光を浴びて色を変えていく。とどまることを知らない、走馬燈のように。
「懐かしいなぁ」
 遠足、運動会。修学旅行に家族旅行。卒業式から入学式まで。
 基本的に私達はいつも笑っている。楽しそうに、嬉しそうに。弾ける笑顔は、光の下を駆け抜けていく。立ち止まることなど知らないかのように。
 今でもきっと同じように笑えるけれど。
 それは決して同じものではない。
「懐かしいよねぇ」
 帰らない返事を待つかのように、何度も何度も、同じ言葉を呟きながら、きっと私は笑っていた。

 泣きたい気持ちを抱えながら。

+ + + + + +

切ない30の言葉達
http://purety.jp/moment/30w.html

02 あの日の憧憬

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