詰めても詰めても、ぽろぽろぽろり。
 落とし穴だらけの世界。

 夜中に一人、膝を抱えて座り込んでみた。
 冷えた床と壁が、少しずつ体温を奪い、まるで元から自分のものであったかのように振る舞っている。
 裸足の指先からは血の気が消え、冷え冷えとした白さ強調している。エナメルでコーティングした爪だけが、毒々しいくらいに鮮やかで、自分は嘘なんだと主張しているような気がした。
 色取り取りの偽物ばかり。
 綺麗に作られたイミテーションの宝石みたいに。
 キラキラ輝く、硝子の欠片。

 目を伏せて、膝に顔を埋める。
 暗闇は優しいとか、暖かいとかよく言うけれど、単純に無関心なだけなのだと思った。包み込むのも、休息の時間を与えてくれるのも、優しさではなく義務。
 万人に等しく与えられる、空っぽの優しさに少し似た、中身のない形ばかりの抱擁でしかない。
 けれどそれは、どこか私に似ている気がした。

 何を詰めても、こぼれ落ちていってしまうのは、決して気のせいなんかじゃないと思う。
 嬉しいことも、楽しいことも、それを心の中にとどめておくことはできない。次の日には消え去って、また私の中は空っぽになってしまっている。
 哀しいことや、寂しいことがなくなってしまってから、また穴が広がっていることも、気のせいなんかじゃないだろう。
 どうしようもないほどに、空っぽなのは、紛れもない真実。
 表面的なものしか残らなかった心は、誰に対しても無関心な暗闇と少し似ているのかもしれない。特別な思いを、誰に対しても抱けない、無関心で、非共感の人でなし。

 どうか、誰か。
 この心に何かを詰めて、破裂させるほどに、埋め尽くしてくれたなら。

+ + + + + +

切ない30の言葉達
http://purety.jp/moment/30w.html

08 満たされない心

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