『空』

2005年1月1日
 キラキラ輝く太陽はいつだって。

 部屋の床に寝っ転がって、カーペットに頬を押しつけた。髪に埃がきっとまとわりついている。灯りと暖房を入れ忘れた室内は、窓の外の雪のおかげで冷え切っていた。冷たい指先を握りしめると、爪がぎりっと手の平に食い込んだ。
 カーペットが敷いてあるとはいえ、硬い床は決して寝心地が良いとは言えない。体がの曲線になじまない平面が、骨を軋ませる。痛いなぁ、と思った。
 動かすことさえ面倒な体とは別に、意識だけはさえ渡っていた。冷えた空気の中で、形を明確に表してしまったそれは、眠ることすら許さず、ただそこに存在し続ける。
 窓の外には雪が降り続けている。
 静かだった。
 雪は音を吸収する性質があるのだと、教えてくれたのは誰だったのだろうか。思い出せない記憶を引き出そうと、そっと目を閉じても、広がるのは暗闇のみ。何もない。
 目を開けても、どうせそこには闇。

 ふと瞼に光が当たった気がした。
 そっと瞳に被さる蓋を押し上げると、細い光が窓から差し込んでいた。夜明けだ。
 体勢を仰向けに変え、もう一度窓を見る。
「夜明け…」
 言葉は白い息となり、解け去っていった。
 そして光は強さを増し、私の暗闇を少しずつ浮き彫りにしていく。
 やめて。
 言おうとして、思った。
 別に構わない。

 窓の外には白い世界と、晴れ渡った空が見えた。
 白い雪と対称的に広がる空は、どこまでも青く、澄み渡り、それでいて青すぎた。遠くまで、果てしなく続いていく空は、まだ青くなりきってはいなかったけれど、それでも私の目には青く映った。
 いや、私の心にはといった方が正しいのかもしれない。
 朝焼けの中、まだ赤い光が徐々に白くなり、世界に色を生み出す中で、空はどんどん青くなっていく。私の心に何かを残した、夏の色に。
 その空を見ながら、私は知らずのうちに笑っていた。

 「すっごい初日の出」
 初めはくすくすと、小さくこらえるように。それから笑いはどんどん広がり、最後には声を上げて、部屋を転がるように笑っていた。
 何も楽しくなんてなかった。
 ただあの空の色が、あまりにも青く見えてしまったから。
 私の心は。

 何かを壊すのでも、何かを生み出すのでもなく、過去に帰るのでも、未来を願うのでもなく。
 ただ、叫んでいたのだ。

+ + + + + +

切ない30の言葉達
http://purety.jp/moment/30w.html

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