『ルーベラ』

2005年1月8日 魔女
 どうして、赤なんだろう。

 手の平にずっしりとした重さを与える、大きな赤い宝石を見つめ、そっと溜息を吐いた。
 一辺の狂いもない美しい球体を、無造作に手の上で転がしながら、じっとその中心を見つめた。そこには不思議な光が宿っているように見える。キラキラとどこからともなく光を放ち、何かとてつもない神秘を感じさせる光だ。
 オーブというらしいが、その実態は結局よくわからない。
 多分、考えてもわからないようなものなのだろうと思い、これっぽっちも考えてはいないのだが。
 美しいもの。
 そして不可思議な力を持っているものだということだけが、無意識に理解できたことだった。

 四色あるオーブを一つずつ持とうと言われた。
 それに関して異論はなかった。問題はないし、それが平等なのだから文句もない。それに美しい宝石のようなものを、直に触れてみたいという素直な気持ちもあった。だからあっさりとOKを出したのだ。
 けれどそれが赤になるとは思わなかった。
 よりによって、血のような紅の光を、間近で見なければならないとは思ってもいなかった。

 くるくると手の平で踊るオーブは、相変わらず美しい光を放っている。
 その光がいつかの夕焼けと重なり、一瞬瞼の奥が揺れた。
 脳みそを入れている容器が、ぐらぐらと揺れ、呼吸ができない。それでいて、心臓だけがいつものように、ゆったりと鼓動を打っていた。
 ぐっと目を閉じ、次に目を開ければ、その時には全て収まっている。

 それでも。
 やはり、赤に対する拒絶が、心の奥には潜んでいた。

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