『裸足』

2005年1月11日
 薙ぎ倒し、踏みつけて。

 柔らかな青い草が生い茂る草原。
 眩い太陽の光を浴び、その下に小さな影を作っていく。そうして、風にさやさやと揺られては、同じように影をも揺らし、囁くように嘆いている。
 それはわたしのこころ。

 土足で踏みにじられたなら、きっと私は拒絶しただろう。
 好きも嫌いもない私だけれど、この空間に入り込んだ異物を、容認はできないと思う。ほったらかしにできるほど、私は私に冷たくない。
 やってきた誰かが、居心地良さそうにとどまったら、私は笑っていらっしゃいを言い、そのすぐ後に背を向けて木陰に横たわるんだ。そうして、木漏れ日を浴びながら、微睡んでしまいたい。
 旅人が去ってしまうときには、その場を動かずさようならを告げ、また瞳を伏せる。
 それだけのこと。

 靴を脱ぎ捨てた彼は、影を作らないようにと、豊かな青い葉を踏みつぶした。薙ぎ倒し、大地に這い蹲ったそれを、裸足で踏みつけたのだ。
 草の匂いが広がり、辺りの空気は一気に夏を孕んだ。
 それから辺りを見回し、笑って挨拶をした。
 「好きです」と。

 踏みにじられても、その柔らかさに笑みがこぼれた。
 薙ぎ倒されても、万遍なく大地に差す光に、何かを忘れ去っていった。
 暑い太陽の下で剥き出しの素肌が、微かに焼けこげた。

 そうやって、貴方は私の心に住み着いた。

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切ない30の言葉達
http://purety.jp/moment/30w.html

24 裸足

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