『Double mind』

2005年2月26日
 知らなかった。
 ――殺してしまいたいほどに、愛することしか。

 鏡の前に立つと、ぼんやりした自分がそこにいる。
 寝癖で跳ね上がった髪、低血圧のためか血色の悪い顔、細長く伸びた四肢と濁った色の瞳。
 起き抜けの自分は、本当に死体のようだと思う。
 そうでなければ、感情の伺えない人形。

 髪を梳いた指先を、そのまま冷水に当てる。
 立ちくらみにも似た浮遊感。
 何処へでも行けそうな気がするのに、ぴくりとも動かない足が、何処へも行けないことを知っていた。
 こんな時は、瞼を閉じる。
 そうすれば、そのまま死んでしまえる気がするから。

 愛してる。愛してる。愛してる。
 貴方がいない世界なんて、私の中に存在しないほどに。

 だから私は、今日も私を殺す。
 そしてそのまま、貴方自身でもある私を愛す。

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