夏の空の向こう側。
いつまでたっても、忘れられない人。
春が来て、高校生活も三年目に入った。小学校から続けているバスケも、そろそろまた引退の時期が近づいてくる。
短い春休みが終わり、新学期が始まる頃には、学校のソメイヨシノが大輪の花を咲かせている。新一年生が入学し、最高学年として部活でも色々と偉そうなことを言えるようになってきた。
この時期はまだ何も思い出さないクセに、桜が散り始めると毎年のように思い出すことがある。
丁度三年前の春。
桜吹雪の中で、水色の透き通った空を見つめていた人を。
何故だかわからないけれど、その後ろ姿に惹かれた。気がつけば目で追っていた。いつも明るくて気が強くて、煩いほどに輝く人だったけれど、時折見せる透明な眼差しが気になった。
これが恋なのか、と思った頃には、もうダメだった。
会話をしたことすらない彼女に、勢いだけで告白すると、彼女は猫のような大きな目を更に見開いた。それから静かに笑った。
「いいよ」
あっさりしすぎているほどの返事をし、それから「シュウ君だっけ?」と首を傾げて見せた。
逆に驚いているこちらを見て、急に彼女は楽しそうに笑った。弾けるような眩しすぎる笑顔だった。
「ヨロシクね、シュウ君」
そういって、差し出された手をそっと握った。
細く白い、壊れ物のような掌だけが、彼女の強さや、明るさを裏切っていた。
あの時咲いた桜は、冬には影も形も消え去った。
けれど別れの言葉を呟いた彼女の瞳は、やはり透明で、離れていった掌も白く細いままだった。
いつまでたっても、忘れられない人。
春が来て、高校生活も三年目に入った。小学校から続けているバスケも、そろそろまた引退の時期が近づいてくる。
短い春休みが終わり、新学期が始まる頃には、学校のソメイヨシノが大輪の花を咲かせている。新一年生が入学し、最高学年として部活でも色々と偉そうなことを言えるようになってきた。
この時期はまだ何も思い出さないクセに、桜が散り始めると毎年のように思い出すことがある。
丁度三年前の春。
桜吹雪の中で、水色の透き通った空を見つめていた人を。
何故だかわからないけれど、その後ろ姿に惹かれた。気がつけば目で追っていた。いつも明るくて気が強くて、煩いほどに輝く人だったけれど、時折見せる透明な眼差しが気になった。
これが恋なのか、と思った頃には、もうダメだった。
会話をしたことすらない彼女に、勢いだけで告白すると、彼女は猫のような大きな目を更に見開いた。それから静かに笑った。
「いいよ」
あっさりしすぎているほどの返事をし、それから「シュウ君だっけ?」と首を傾げて見せた。
逆に驚いているこちらを見て、急に彼女は楽しそうに笑った。弾けるような眩しすぎる笑顔だった。
「ヨロシクね、シュウ君」
そういって、差し出された手をそっと握った。
細く白い、壊れ物のような掌だけが、彼女の強さや、明るさを裏切っていた。
あの時咲いた桜は、冬には影も形も消え去った。
けれど別れの言葉を呟いた彼女の瞳は、やはり透明で、離れていった掌も白く細いままだった。
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