笑った顔は非道く美しいものだと思う。けれどその美しさを、自ら好んで血で汚しているとも思う。
闇の中で人を殺し、その血を浴びて、静かに笑う女に、少年はどうしようもなく惹かれていた。
その深紅の瞳、迷わない心、闇に溶ける髪。それらから、きっと逃れられないだろうとも、思っていた。
「死にたくなきゃ戦え」
冷たく言い放つ薄い唇は綺麗な弧を描いている。そのくせ、目は笑っていない。
「戦いたくなきゃ、死ね」
すっと視線をこちらに動かし、また正面を見つめる。何もない空を。
吐き捨てるような口調で言うと、彼女は乱暴に身体を翻し、どこかへ行ってしまった。つなぎ止めることのできない人だとは思っていた。けれど、今日だけは思わず呼び止めた。
「どちらも嫌なら?」
「……あたしにそれを聞くのか、坊や?」
振り向いた顔は不機嫌そのもので、一瞬身体が竦んだ。
堅くなった身体を宥めるように頷くと、女は馬鹿にしたような顔で、静かに呟いた。
「どちらも嫌なら、生きろ」
当たり前のように告げ、女は立ち去った。
今度こそ、その足を止めることなど、出来なかった。
闇の中で人を殺し、その血を浴びて、静かに笑う女に、少年はどうしようもなく惹かれていた。
その深紅の瞳、迷わない心、闇に溶ける髪。それらから、きっと逃れられないだろうとも、思っていた。
「死にたくなきゃ戦え」
冷たく言い放つ薄い唇は綺麗な弧を描いている。そのくせ、目は笑っていない。
「戦いたくなきゃ、死ね」
すっと視線をこちらに動かし、また正面を見つめる。何もない空を。
吐き捨てるような口調で言うと、彼女は乱暴に身体を翻し、どこかへ行ってしまった。つなぎ止めることのできない人だとは思っていた。けれど、今日だけは思わず呼び止めた。
「どちらも嫌なら?」
「……あたしにそれを聞くのか、坊や?」
振り向いた顔は不機嫌そのもので、一瞬身体が竦んだ。
堅くなった身体を宥めるように頷くと、女は馬鹿にしたような顔で、静かに呟いた。
「どちらも嫌なら、生きろ」
当たり前のように告げ、女は立ち去った。
今度こそ、その足を止めることなど、出来なかった。
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