細い路地を塞ぐように、その女は立っていた。
片側の壁に寄りかかり、もう片側の壁に片足をかけている。
通さないと言わんばかりの態度に、腹が立たなかったと言えば嘘になる。だがそれ以上に少年は恐れた。何故、この女が此処にいるのかと、大声で問いたいほどに。
「お前、拾ってやるよ」
女は少年を見て、にぃと笑った。唇の右端だけをつり上げる、酷く楽しげに。そうして、少年からしてみれば、訳のわからないことを言った。至極当然のように。
「今何やってんだ? スリか? 掻払いか? もっとでかいことをやらせてやるよ」
「何……」
呆然と呟くと、女はまた楽しげに笑った。けれどその深紅の双眸は、僅かにも笑ってなどいなかった。
「人殺しさ。少なくとも、今よりは稼げるぜ? まぁ、実力勝負だけどな」
「あんた、何なんだよ!」
「ちょっと弟子を捜しててな。別にそんなもんいらないんだけど、師匠の技が潰えちまうのは、さすがに申し訳ない。で、お前に目を付けたただの暗殺者さ」
半ば恐慌状態に陥った少年が叫ぶと、女は何でもないことのように、恐ろしいことを告げた。
「何で俺なんだ?」
「あたしを見て、走って逃げただろう? 誰が強いか、誰が危険か、それくらいわかる奴じゃないと、弟子になんかできねぇ。闇雲につっこんで無駄死にするような奴じゃ、教えるだけ無駄だ」
そうして、女は少年に右手を差し出した。
「お前、拾ってやるよ。だから来いよ」
有無を言わせない口調と、深紅の瞳と、どこからか漂う血の匂いに乗せられ、少年はその手を取った。
片側の壁に寄りかかり、もう片側の壁に片足をかけている。
通さないと言わんばかりの態度に、腹が立たなかったと言えば嘘になる。だがそれ以上に少年は恐れた。何故、この女が此処にいるのかと、大声で問いたいほどに。
「お前、拾ってやるよ」
女は少年を見て、にぃと笑った。唇の右端だけをつり上げる、酷く楽しげに。そうして、少年からしてみれば、訳のわからないことを言った。至極当然のように。
「今何やってんだ? スリか? 掻払いか? もっとでかいことをやらせてやるよ」
「何……」
呆然と呟くと、女はまた楽しげに笑った。けれどその深紅の双眸は、僅かにも笑ってなどいなかった。
「人殺しさ。少なくとも、今よりは稼げるぜ? まぁ、実力勝負だけどな」
「あんた、何なんだよ!」
「ちょっと弟子を捜しててな。別にそんなもんいらないんだけど、師匠の技が潰えちまうのは、さすがに申し訳ない。で、お前に目を付けたただの暗殺者さ」
半ば恐慌状態に陥った少年が叫ぶと、女は何でもないことのように、恐ろしいことを告げた。
「何で俺なんだ?」
「あたしを見て、走って逃げただろう? 誰が強いか、誰が危険か、それくらいわかる奴じゃないと、弟子になんかできねぇ。闇雲につっこんで無駄死にするような奴じゃ、教えるだけ無駄だ」
そうして、女は少年に右手を差し出した。
「お前、拾ってやるよ。だから来いよ」
有無を言わせない口調と、深紅の瞳と、どこからか漂う血の匂いに乗せられ、少年はその手を取った。
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