怪我人を拾った。

 大して強くもない自分でも、あっさり勝てるような楽な場所へ冒険へ行った帰り、葉月は倒れている少女を見つけ慌てた。
 楽勝を前提に出掛けている自分とは違い、本当に命がけで危険な場所へ赴く人もいる。そのうちの一人なのだろう。辺りに仲間らしき人も見当たらない。
 そうと分かればますます放っておけなくなり、癒しの魔法をかけてから応急手当をした。葉月は魔法が得意ではない。だからどうしたって、大した効果がでない。元々の魔力が強くないのだ。
 そうして大して大柄でもない自分よりも、更に小柄な少女を背負って家に帰った。

 疲れながら家に帰って、ベッドに少女を寝かせた。
 水を汲んでタオルを濡らし、汚れていた顔や腕を拭いて、それからもう一度癒しの魔法をかけた。やっぱりあまり効果は出なかったけれど、出血は完全に収まったようだった。
 ほっと安堵の溜息を吐き、葉月自身もベッドに寄りかかり、軽く目を閉じた。なんだかとても疲れた気がした。体力には自信があった筈なのだけれど。

 それはきっと、傷ついて倒れた少女の小さな背中が、何かに重なって見えたからなのだと、夢の中で葉月は気がついた。

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