別れたら、きっともう二度と会えない。そんな気がして、約束をせがんだ。
 彼女は困った顔で笑い、どうしようかと迷っているようだった。
「もう会いたくない?」
 ずるい問いだ。そう思いながら尋ねると、やっぱり彼女は同じように笑って、ゆるりと首を振った。
「嘘つきになりたくないだけ」
 本当にそれだけ。続いた言葉は、溜息の裏に隠しきれない、彼女自身の本当の気持ちなのだろう。
「私は何も言わなかったの。いつも。嘘を言わない代わりに、本当のことも言わなかった。約束は、いつだって破ってしまうから」
 ゴメンね。
 小さく謝ったあと、彼女は押し黙り、俯いた。

 そして。
「またね」
 本当に小さな声で、そう呟き、躊躇うことなく踵を返していってしまった。
 葉月は、ただ、その綺麗な後ろ姿を見送った。

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