『Yesterday once more』

2004年6月28日
 昨日という日が、やけに懐かしく感じられるのは、いるはずの人がいないからなのだと、ようやく羽水は気づいた。

 月が隠れた、とは言ってしまえば、力ある誰かが死んだということだ。今回は、それが親友だった。
 同じ日に生まれ、同じ光を浴びて育ちながら、全く違う性質の力を持ち、正反対の家に生まれた親友。先日、彼は眠るように月へ旅だってしまった。
 きっと今頃は、もう月の光に溶けてしまったに違いない。そうして早々と生まれ変わる準備をしているのかもしれない。
 昨日までは、すぐ隣にいたというのに。
 今ではもう、こんなにも、これほどまでに遠い。

 最初に死んだのは、親友の妻でもある妹だった。
 そして次に、羽水の妻が死んだ。病気だった。
 親友は、妻と同じ病に倒れ、そして月へと帰って行った。

 取り残された、とは思わない。
 ただ、けれど、独り残ってしまったと、そればかり思ってしまう。
 共に逝けないことなど、知っていた。それがどうしたって無理であることくらい、知っていた。
 けれどその、思いこみや無知にも似た知識のおかげで、ずるずると生き延びてしまったこともまた事実で、時折羽水は泣きたくなる。

 昨日が愛しいとは思うまい。
 もう一度、昨日を手に入れたいとは思うまい。
 ただ矢張り、懐かしさと愛しさと切なさばかりが募って、涙も溢れなかった。

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