『だいじなひと』

2004年6月30日
 誰にしても、この人以上に好きな人はいない、という人が現れるらしい。
 大事で大切で愛しくて、少し切なくて、厳しく叱咤し、優しく抱き留め、無言で寄り添いながらも、恋しくて堪らない人が。
 愛という言葉で表すには、あまりにも小さく、幼く、不器用で。
 恋と呼ぶには、大きすぎて、抱えきれず、重すぎる。
 そんな人が。

 最近、ようやく理解したことがある。
 それは、母にとって、それくらい大事な人というのが、葉月の養い親であるだろう、ということだ。父ではなく、親友であり、従兄である彼を、きっと母は誰より大切に思っていた。
 そのことを今更ながら気づいた訳は、きっと彼が消えてしまったからだろう。月へ行こうかと思う。そんな軽い言葉を残して、あっさりと消えてしまった養い親。

 大事な物は、失ってやっと気がつくとはよく言うけれど、彼が消えてしまって、彼のことをやっと理解できたなど。
 口が裂けても言う気にはなれなかった。

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