香月がふと目を覚ますと、窓から白い光が差し込んでいた。カーテンを閉め忘れたまま眠っていたらしい。良い夢を見ていた気がしたのに、眩しくて目が覚めたのだろう。
カーテンを閉めようかとも思ったが、身体を動かすことが億劫で、彼女はぼんやりと窓の外を眺め、溜息を吐いた。
自由に動かせない身体と、いつの間にか気力やら体力を奪い去っていく病が、この上なく憎らしかった。
気がつけば、細くなっている自分の四肢や、外に出ないために白すぎる肌も、健康だった時よりも明らかに鈍っている思考回路も、全てが憎かった。
死にたくないなぁ。
口には出さずに呟き、彼女は遠い空を見上げた。
太陽が昇りきっていない白い空には、微かに月が浮かんで見える。今にもかき消されてしまいそうな、薄い色の真っ白な月。
その、本来の姿とは同じでありながらも大きく違う、儚い姿に香月はふと親友の姿を思い出した。風に揺れ、光を透かし、影さえできず、血も涙も流せなくなってしまった親友を。
約束を破り、月の加護からはずされた悲しい亡霊。
「本当に、馬鹿な人」
ぽつりと呟くと、病の所為か昔よりもずっと弱くなっている心が、軋むように悲鳴を上げた気がした。
約束を破った代償に、身を引くとか、会わないとか。そんな訳の分からないことを言った彼は、その言葉通り香月の前に姿を現そうとはしない。
死んでしまったとて、亡霊となってしまったとて、それでもやはり変わらないものがあるというのに。
「なんて、馬鹿な人」
もう一度呟き、喉の奥から迫り上がってくる言葉にならない思いを、香月は噛み殺した。
そうして気づいてしまった。
先程見た、良い夢の光景の中に、誰がいたのかを。
月はもう、彼のことなど愛していないだろう。
それでも彼女には、彼の幸せを月に祈ることしかできなかった。
愚かなことと、知りつつも。
カーテンを閉めようかとも思ったが、身体を動かすことが億劫で、彼女はぼんやりと窓の外を眺め、溜息を吐いた。
自由に動かせない身体と、いつの間にか気力やら体力を奪い去っていく病が、この上なく憎らしかった。
気がつけば、細くなっている自分の四肢や、外に出ないために白すぎる肌も、健康だった時よりも明らかに鈍っている思考回路も、全てが憎かった。
死にたくないなぁ。
口には出さずに呟き、彼女は遠い空を見上げた。
太陽が昇りきっていない白い空には、微かに月が浮かんで見える。今にもかき消されてしまいそうな、薄い色の真っ白な月。
その、本来の姿とは同じでありながらも大きく違う、儚い姿に香月はふと親友の姿を思い出した。風に揺れ、光を透かし、影さえできず、血も涙も流せなくなってしまった親友を。
約束を破り、月の加護からはずされた悲しい亡霊。
「本当に、馬鹿な人」
ぽつりと呟くと、病の所為か昔よりもずっと弱くなっている心が、軋むように悲鳴を上げた気がした。
約束を破った代償に、身を引くとか、会わないとか。そんな訳の分からないことを言った彼は、その言葉通り香月の前に姿を現そうとはしない。
死んでしまったとて、亡霊となってしまったとて、それでもやはり変わらないものがあるというのに。
「なんて、馬鹿な人」
もう一度呟き、喉の奥から迫り上がってくる言葉にならない思いを、香月は噛み殺した。
そうして気づいてしまった。
先程見た、良い夢の光景の中に、誰がいたのかを。
月はもう、彼のことなど愛していないだろう。
それでも彼女には、彼の幸せを月に祈ることしかできなかった。
愚かなことと、知りつつも。
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