美岬先輩には、屋上がよく似合う。

 紅く染めた髪が、風にばたばたとはためいて、空へ昇ろうとする。美岬先輩はその髪をじゃまくさそうに抑えながら、空を仰いだ。
「青いなぁ」
「……そうですね」
 空は快晴。
 どう返事をして良いか分からず、私は適当に相槌を打った。
「オマエ、返事適当すぎ」
 そう言って、先輩はけらけらと楽しそうに笑い声を上げた。別に怒ってる訳ではない。

 空は青く、美岬先輩はどこまでも紅い。
 その相反する色は、どうしたって目に焼き付いてしまい、決して離れようとしてくれないのだ。
「夏草や」
「……兵どもが、夢の跡?」
「大正解ー!」
 ぽつりと呟いた言葉に、続けて有名な俳句を詠むと、先輩は嬉しそうに大声を張り上げた。空に向かって。
「夏が終わるよ」
「……そうですね」
「みんなみんな、死んで終わるけど、だけど誰も死んじゃいない」
 そうだろう、と首を傾げられても、私は答える術など持てないのだ。

 けれど空は青く、先輩は紅く、混ざり合わない二色の色が、世界を美しく彩っていた。

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