『彼女という人』

2005年4月23日
 彼女を好きだったのかと聞かれたら、イエスと答えるだろう。
 彼女を嫌っていたのかと聞かれたら、イエスと答えるだろう。
 けれど、彼女を憎んでいたのかと聞かれたら、言葉に詰まる他ない。

 狂気に染まった血の色の瞳、迷うことのない刃の軌跡、命を葬り去る躍動感、生きることを忘れた気怠げな平穏、壊れた微笑みと血に塗れた唇。
 あの迷わない心に、誰もが戦き、嫌い、憎みながらも、強く弾かれた。濃い影の向こう側に、強い光があるように。誰もが溺れた。
 結局は、自分もその一人だったのだと思う。
 炎に引き寄せられ、羽根を焦がした蛾のようなもの。

 死の瞬間まで、彼女が彼女らしくあったことを、微かに嬉しく思う。
 それと同時に、やっと死んでくれたと心から思う。心から、その死を悼みながら、祝福したい。
 もう何かに急かされるように、誰かを殺すことも、自分の命を探し回ることも、血を浴びることもしなくて良いのだと思うと、そんな気分になるのだ。
 本人に言ったら、鼻で笑われるだろうが。

 未だに思い出すのは、赤すぎる瞳と低い声。
 そして誰かの命を奪う後ろ姿ばかり。

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