冷えた指を伸ばすと、熱を帯びた指先が絡んできた。火傷しそうだと思った。あまりに熱くて、痛かった。包まれているのに、結ばれているようで、解くことさえ出来なかった。
 どれが自分の指かわからなくなるくらい、きつく絡めてくれれば良いのに、触れあうだけの指は、やっぱり冷たいままで、熱に触れては震え上がった。
 いつか殺される。
 無性にそう感じた。

 熱い指先が素肌に触れてくる。
 ぞくぞくとした快感の下には、いつだって寒気が潜んでいる。ひやりとした冷気が心を撫でまわし、これは違うよと余計なことばかり教えてくれる。
 これは彼じゃないよ。
 この指はあの人のものじゃないんだよ。
 ――そんなこと、知ってる。

 愛してなかった。
 恋心さえ抱いていなかった。
 それでも欲しかった。憎んで欲しかった。跡を付けて欲しかった。
 残された傷跡を、いつも冷えた指先でなぞっては、あの日の痛みを思い出す。

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