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2006年10月25日
 月が綺麗な晩に葉月は養い親と二人で、揺れる月見草を見ていた。幽かな風に揺れる黄色い花。その静かな音が背景を彩る中で、氷河はいつものように亡き母の思い出を語ってくれた。
 とても静かに。
 そんな彼に、葉月が父について尋ねてみると、彼は非常に嫌そうに口を開いた。
「知ってるけど、あまり知らないよ」
 それだけ言うと、子どものようにそっぽを向いてみせた。
「氷河は父さんが嫌いだったの?」
 あからさまに透けて見える嫌悪。それについて一応確認を取ろうとすると、彼は今度は渋々というように口を開いた。
「嫌いじゃないよ。好きじゃないだけで。――大体ね」
 それから溜息を一つはき出すと、仕方ないじゃないかと小さく零した。
「僕は香月が、……誰より好きだったんだから」
 照れるでもなく、しみじみとそういってから、もう一度氷河は仕方ないじゃないかと呟いた。

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