2007年5月23日
 おまえは知らないだろう、とその獣は吐いた。

 愛しいものを喰らったことのないお前には、到底分かるまい。
 こんなにも愛しくて、悲しくて、嬉しくて、苦しいことは他にはない。
 一つになれる喜びと、二つに戻れない切なさ。
 土に返そうと思えば嫉妬に狂う。けれど自らの血肉とすることには、ただただ戦く。
 喰らえばともに生きられるなど、生温い言い訳に過ぎぬ。
 所詮、どこまで行こうと一人きり。

 お前には分かるまい。
 そう呟いた獣の瞳に光る、知性と呼ぶにはあまりにぎらついたものを、一生忘れることはなかった。

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