昼休み、一緒に食事をする相手は、気づくと決まっている。その最初の流れに上手く乗れないと、最後まで決まらないものだ。そして友達があまりいない僕は、誰かと食べる時もあるが、一人で食べるときの方が多い。もう慣れたこと。
コンビニで買った昼ご飯を腕にぶら下げ、一階にある食堂に向かった。たくさん人がいる場所は、ものすごくうるさくて、自分が一人きりだということを実感させる。けれど、それ以上に人の波に紛れてしまえる気がして、僕は食事を持っていてもよく食堂へ来た。
知っている人ばかりの教室で一人よりも、知らない人だらけの食堂で一人の方が、気持ちは軽い。
自動販売機でパックのジュースを買い、空いている席に座った。僕はあまり食べるのが早くない。昆布のおにぎりをゆっくり咀嚼しながら、目の前の空席を見つめた。その席が知り合いで埋まったことは、一度もない。
食堂にはいろんな人がいるから、一人で食べている人もそれなりにいる。けれどやはり、昼食持参で食堂にいる人間は珍しいのだろう。時々投げられる視線に気づかないふりをしながら、おにぎりを飲み込んだ。
斜め後ろの方で女の子の声が聞こえた。席が空いてないとか、どうする、とかそんな内容だった。食堂の席はすぐに混んでしまうから、五人以上になると、昼休みが始まった直後くらいでないと座れない。
話し合う声が聞こえなくなって、すぐだった。
目の前の席に、カレーライスが置かれた。
「いーい?」
弾かれるように視線を上げると、春日さんが笑っていた。
「え? あ、いいよ」
「ありがとー」
彼女は席に着くと、さっきあっちで席がなくて、と話し始めた。
「なんかもう、席探すのめんどくさくてさ。人数分ければいいだけだから、さっさと離れてきちゃったんだ」
ああ、さっき聞こえた声は、春日さんたちのグループだったのか、と思った。大人数で席を探すことに飽きて、自分は一人で食べるから、という結論になったらしい。
それから彼女は、まるで独り言かのように、ずっと僕に向かって話続けた。相槌をうつタイミングに気を遣いすぎて、いつも以上に時間のかかる昼食だったけれど、ずっと喋っている春日さんと同じくらいに食べ終わった。
「ナツキ、もう行くよー」
別れたグループの女子が、春日さんにそう声をかけると、彼女は「もうちょっとしたら行くー」と答えた。
そして僕の方を見て「それでね」と話を続けた。
コンビニで買った昼ご飯を腕にぶら下げ、一階にある食堂に向かった。たくさん人がいる場所は、ものすごくうるさくて、自分が一人きりだということを実感させる。けれど、それ以上に人の波に紛れてしまえる気がして、僕は食事を持っていてもよく食堂へ来た。
知っている人ばかりの教室で一人よりも、知らない人だらけの食堂で一人の方が、気持ちは軽い。
自動販売機でパックのジュースを買い、空いている席に座った。僕はあまり食べるのが早くない。昆布のおにぎりをゆっくり咀嚼しながら、目の前の空席を見つめた。その席が知り合いで埋まったことは、一度もない。
食堂にはいろんな人がいるから、一人で食べている人もそれなりにいる。けれどやはり、昼食持参で食堂にいる人間は珍しいのだろう。時々投げられる視線に気づかないふりをしながら、おにぎりを飲み込んだ。
斜め後ろの方で女の子の声が聞こえた。席が空いてないとか、どうする、とかそんな内容だった。食堂の席はすぐに混んでしまうから、五人以上になると、昼休みが始まった直後くらいでないと座れない。
話し合う声が聞こえなくなって、すぐだった。
目の前の席に、カレーライスが置かれた。
「いーい?」
弾かれるように視線を上げると、春日さんが笑っていた。
「え? あ、いいよ」
「ありがとー」
彼女は席に着くと、さっきあっちで席がなくて、と話し始めた。
「なんかもう、席探すのめんどくさくてさ。人数分ければいいだけだから、さっさと離れてきちゃったんだ」
ああ、さっき聞こえた声は、春日さんたちのグループだったのか、と思った。大人数で席を探すことに飽きて、自分は一人で食べるから、という結論になったらしい。
それから彼女は、まるで独り言かのように、ずっと僕に向かって話続けた。相槌をうつタイミングに気を遣いすぎて、いつも以上に時間のかかる昼食だったけれど、ずっと喋っている春日さんと同じくらいに食べ終わった。
「ナツキ、もう行くよー」
別れたグループの女子が、春日さんにそう声をかけると、彼女は「もうちょっとしたら行くー」と答えた。
そして僕の方を見て「それでね」と話を続けた。
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